夏の到来

「四季の内、好きな季節は何ですか?」

四季折々あるなかで、それぞれにそれぞれの魅力はあるのだけれども、ボク自身は「夏である」と答える。

そう、よどみなく即答で。

さりとて、「夏が好きだ」と叫び外へ繰り出そうものなら、熱中症やら日射病やらのデバフをもりもりとくらうぐらいに日光は苦手であり、よく熱中症にいたる。「好き嫌いと得手不得手は別物」という好事例であるし、好奇の目にもさらされる。

木々や地にあふれる瑞々しい新緑、そこから漏れ出でる強い木漏れ日のプリズム、チリチリと焼けつくようなアスファルトから発する熱、揺らぐカゲロウ、激しくも物悲しいセミの声、次亜塩素酸ナトリウムにより独特の匂いを醸し出すプール。

「夏」を構成するそのすべてが好きなのだが、なかでも春霞を梅雨が洗い流し、新たにむき出しとなった抜けるような「空の色」が好きである。

生命力あふれる「夏」にほだされて、ボク自身もなぜか「なにかできるかもしれない」「なにか起こるかもしれない」、そんな気分にひとり心躍るのである。

そんな「夏」を、時を忘れて見続けていたい――そう、できる限り室内で。

そう思うとき、ボクには行く場所がある。

できる限り「日陰」を選んで歩きながら、もはや「シャッター街」と化した商店街を抜けていく。

間をおいて開いている店舗から漏れ出でるクーラーの冷気によって、「熱い」「寒い」を繰り返しながら、続く商店街の反対側にひっそりと佇む雑居ビルへと身を滑りこませる。

「壊れているんじゃないか」と思うくらいに来ないエレベーターに嫌気をさし、階段で2階へと上がると、そこにあるのは「喫茶店」である。「カフェ」だのなんだのと溢れかえる時代ではあるが、そこにあるのは純然たる「純喫茶」なのである。

扉を開ければ当然鳴る「カランコロン」というベルの音、一人客であることを告げて、すいている窓側の席に腰を下ろす。こんな日差しの強い日に窓側へ座ろうなどとする酔狂な人間は少ない。

店内には熟年の女性が3人ほど働いている。ひとりでも十二分に回しきれるほどの客数しか見たことがないのだけれども、なぜか3人で待機し、店内のどの客よりもガヤガヤと何かしらの話題で盛り上がっている。

「アイスコーヒー」を注文し、ふたたび意識を窓の外へ向ける。ボクは大抵この店では「アイスコーヒー」しか頼まない。

以前、知り合いと食べ物の話になり、「嗚呼、久しぶりに昔懐かしカレーライスが食べたいなあ」と思うに至った。ボク自身は常日頃から、インドカレーやタイカレーの方が好きなのだけれども、なぜか、その時はそう思ってしまったのだから仕方がない。

「昔ながらのカレーライス」を出す店なんて、ボク自身の少ないレパートリーにはひとつも無かったのだけれども、その際にこの3人の熟年店員を思い出し、その店でカレーライスを頼んだ。

結果から言えば、もうわけのわからないゴリゴリのアレンジがされており、カレーライスをトータルで見た時に、ボクの人生のなかで一番美味しくないものであり、「3人もいて何故だれもこのアレンジを止めないのだ……」と理不尽な怒りが沸々と湧きあがり、「もうこの店では食べ物は頼まない」と、ひとり抵抗勢力と化した。

「アイスコーヒー」を飲み、机に突っ伏して外の駅前通りを歩く人々や並木通りの街路樹、噴水などを何の気なしに眺めながら、ボク自身、「夏に秘められた魅力」は何なのかと思いにふける。

もう、全力でテーブルの冷たさを全身で味わっている時点で、ボク自身は奇人の類に見られるのであろう。

「夏の思い出」として思い出されるのは幼少期、母と行った近所のスーパー、その近くで食べたバーガーショップから見た「外の景色」である。

「遊園地へ行きたい」「動物園へ行きたい」そんな思いはあったのだけれども、「母ひとりで育ててもらっている」その苦労は、幼少期ながらぼんやりではあるけれども理解していた。

だから、それがたとえ近所であれ、「母と行く場所」がすでに特別であり、食べるハンバーガーも、今でこそ美味しくもないハンバーガーではあるものの、「特別な間食」であった。

「食べ過ぎると夕飯が食べられなくなる」との注意をさんざんに受けながらも、そこでボクは「特別な食事」を堪能し、自身の夢なり、夏休みにやりたいコトなりを母に聞かせ、母は常に笑顔でそれを見守ってくれていた。

暑さで上着を脱ぎ、腕をまくり、けだるそうに歩くサラリーマン、はしゃぐ子どもをあやしながら首の汗をぬぐう母親、乱反射する水面の光、全面に光を浴びてさらに輝きを増す新緑――

見ている景色は、なにひとつ幼少期に見た景色とは一切合切異なるのだけれども、それらのパーツ一つひとつを脳内で組み合わせて組み替えて、ボクはそのノスタルジーに浸っているのかもしれない。

何もできなかった、何ものにもなれなかったボクではあるが、「夏の日」はいつも忘れかけていた可能性を思い出させ、あの日の空気に帰らせてくれるのかもしれない。

当時ほどの「大きな夢」は見れないかもしれないけれども、ボクは「小さい夢」ながらもそれを叶える方法と手段はすでに持っているんだと思う。

小さな眼で見てきた景色をダブらせながら、「止まってはいられないのかもしれない」と、すでに溶け出してテーブルにくっついた体を、めりめりと剥がしながら、ボクは夏に追い立てられる。

――そんな「夏」が好きなのだから、確かに変わり者の類である。

なにが言いたいかといういと、この「ロミンサンルテナン・ジャケット」めっちゃええやん、ということである。

コレを取るために、平日の夜は「冒険者小隊」のためだけにインしていたぐらい、やっと欲しい装備に出会えた気分である。

 

 

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Author: helio Shinryuサーバーで、ララフェル召喚士として、がんばると決めた! 「FF14 BLOG ANTENNA」の運営もがんばっちょりまっする!